先日から報道されている中国における子どもの肺炎のパンデミックに関してです。WHOが中国当局と情報共有をしたとの報道がありました。実際にWHOのHPでも関連情報が公開されています。
https://www.who.int/news/item/22-11-2023-who-statement-on-reported-clusters-of-respiratory-illness-in-children-in-northern-china
<現在わかる範囲での情報をまとめました>
・2023年5月以降、マイコプラズマ肺炎が急増した
・10月以降はRSウイルス・アデノウイルス・インフルエンザ・新型コロナウイルスが増加している
・これらのウイルス感染は従来の流行パターンよりも早い時期に出現し、急増している
・感染者数の増加に伴い、重症化して肺炎で入院する児が増加している
・今のところ新規の病原体や特別な症状(変異ウイルスによる重症化)の報告はない
<これらの情報をどう読み解くか?>
・本邦でも既に中国で報道されているような状況が発生している
・2021年夏のRSウイルス大流行から始まり、今年はインフルエンザを始め、様々な呼吸器感染症が大流行している
・特に今年6-7月はRSウイルスとヒトメタニューモウイルスの大流行によって小児の入院病床がこれまでになくひっ迫した
・RSウイルスやヒトメタニューモウイルスは乳児の喘息や肺炎を惹起するもので、小児病院の集中治療室が満床で一般病床にまで重症患者が溢れていた
・したがって、中国は日本よりもやや遅くに従来の感染症パンデミックを経験しているが、他の国でも同様なことが起きており、中国に限った話ではない
・現在中国で流行している疾患のうちまだ本邦で流行がないのがマイコプラズマである
・今後我が国でも小児のマイコプラズマ肺炎のパンデミックが近い未来に起きる可能性が十分にある
・マイコプラズマは潜伏期間が長く、治療には特定の抗菌薬が必要になる
・現在の非常に脆弱な薬剤流通事情でこのパンデミックが起きた場合、専用の治療薬や検査試薬は不足が必発
・耐性菌を助長する広域抗菌薬の処方や、本来抗菌薬が不要な児に対しての抗菌薬投与の増加が懸念され、AMR(薬剤耐性菌)対策における抗菌薬適正使用が大いに乱れる可能性ある
<今できること>
・マイコプラズマなど様々な病原体のパンデミックを完全に防ぐことはまず不可能と思われるが、病原体が何であれ、従来通りの感染対策を順守するに尽きる
・一般市民が出来る具体的なアクション:手洗い・うがいの励行、こまめな換気、体調不良時には早期に休む、早期の学級閉鎖
・医療従事者が出来る具体的なアクション:医療施設内での感染対策(院内感染の防止:換気・空間的分離・時間的分離)、適切な迅速検査、適切な処方
当院は今後起こりうる新たな感染症パンデミックにも対応できるよう設計しております。引き続き、換気・トリアージ・原因病原体の同定(各種抗原検査・呼吸器ウイルスの網羅的PCR)・抗菌薬適正処方に最大限注力してまいります。
院長 山岡正慶